2024年12月の建設業法改正により、現場技術者の専任性に関する制度が変更となりました。注目すべき点は、従来の「特例監理技術者」制度が見直され、新たに「専任特例1号」と「専任特例2号」という2つの制度ができました。
この2つの制度の理解が今後の現場運営において重要です。本記事ではこれらの制度について詳しく解説します。

従来の「特例監理技術者」とは?

従来の「特例監理技術者」とは2020年10月の建設業法改正によりできた制度であり、現在の「専任特例2号」に該当する制度で、監理技術者の兼務を可能にするための制度でした。                      請負金額等の要件を満たす工事において、工事現場ごとに「監理技術者補佐」を専任で配置すれば、専任でなければならない監理技術者が、最大で2つの現場を兼務できるようにするものです。                 この「特例監理技術者」制度は、2024年12月の改正により、名称が「専任特例2号」へと変更されました。制度の基本的な内容は引き継がれていますが、新たな「専任特例1号」が加わったことで、制度全体が再編されています。

今回の改正の背景として、近年の建設技術者不足や生産性向上の必要性から、後述する情報通信技術を活用した専任性の合理化が求められてきました。

専任特例1号とは?

専任特例1号は請負代金の額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)で専任性が求められていた現場において、一定の要件を満たすことで最大2つの現場を兼任できる制度です。
但し要件がいくつかありますので下記へ挙げます。
・工事現場間の距離制限
工事現場間の距離が1日で巡回可能かつ移動時間が概ね片道2時間以内です。この移動時間は自動車などの通常の移動を前提とした時間です。
・下請次数の制限
また下請次数の制限があり、当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3を超えていないことなどが条件です。
・連絡員の配置義務
主任技術者・監理技術者との連絡を行う者を配置する必要があります。また、土木一式・建築一式工事の場合は、当該工事に関する実務経験1年以上を有する者を当該建設工事に置いている必要があります。
・施工体制を確認する情報通信技術の措置
当該工事現場の施工体制を主任技術者または監理技術者が、情報通信技術を利用する方法により、確認するための措置を講じていることが必要です。                                  具体的には現場作業員の入退場が遠隔から確認できるものとし、CCUS等を活用したシステムであることが望ましいとされています。

専任特例1号の特徴

専任特例1号の特徴は「連絡員」の配置です。連絡員の役割は主任技術者や監理技術者が、他の現場にいる際の連絡役を務め、円滑な施工管理をサポートします。また連絡員には専任や常駐、雇用形態は求められず、複数の工事の兼務も可能であることです。

専任特例2号とは?

冒頭でも触れましたが、専任特例2号は、従来からあった「特例監理技術者」制度を引き継いだものです。監理技術者が専任を要する現場において、監理技術者補佐を現場ごとに配置することで、最大2つの現場を兼任できる制度です。

専任特例2号の特徴

専任特例2号の主な特徴は以下の通りです。
・監理技術者のみが利用可能な制度
・主任技術者には適用されない
・各現場に監理技術者補佐を専任で配置する必要がある
・監理技術者補佐は「主任技術者の要件を有し、かつ、1級技士の者」または「監理技術者の要件を有する者」である
・専任特例1号と異なり、請負代金の額に制限はない

専任特例1号と専任特例2号の違いは?

〈適用対象者〉
専任特例1号:主任技術者・監理技術者の両方に適用
専任特例2号:監理技術者のみに適用

〈補助者の要件〉
専任特例1号:連絡員
専任特例2号:監理技術者補佐

〈請負代金の額制限〉
専任特例1号:1億円未満(建築一式工事は2億円未満)
専任特例2号:制限なし

〈技術的要件〉
専任特例1号:ICT活用、情報通信機器設置等の要件あり
専任特例2号:従来通り、特別な技術的要件なし

今回の改正では、営業所に専任で置かれる技術者(営業所技術者・特定営業所技術者)が、一定の要件下で専任を要する工事現場の技術者を兼務することも可能となりました。
しかし、専任特例1号と専任特例2号を同時に兼務することはできません。                  どちらか一方の制度のみを選択する必要がありますのでご注意ください。

専任特例1号、専任特例2号のどちらを選ぶべき

専任特例1号または専任特例2号のどちらを選ぶべきかですが、下記へまとめます。
〈専任特例1号を選ぶべき場合〉
・請負代金の額が1億円未満(建築一式工事2億円未満)の工事
・ICT活用に積極的で、システム投資が可能
・連絡員の確保が比較的容易
・主任技術者レベルでの兼任を希望する場合

〈専任特例2号を選ぶべき場合〉
・請負代金の額が高額(1億円を超える)工事
・監理技術者補佐の確保が可能
・従来の運用を継続したい
・ICTシステムの導入が困難

帳簿の作成と保存義務

専任特例を活用する場合、詳細な人員配置計画書の作成と保存が義務付けられています。個人の場合は5年、法人の場合は10年の保存義務があります。適切な文書監理体制が不可欠です。

専任特例1号と専任特例2号は、それぞれ異なる特徴と要件を持った制度です。各事業者の皆様におかれましては工事規模、技術者の保有状況、ICT活用の有無等を総合的に検討し、最適な制度を選択することが重要です。

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グラス湘南行政書士事務所