建設業許可を取得されて、日々の業務にご多忙の皆様におかれましては、つい忘れがちなのが毎年の「決算変更届」の提出ではないでしょうか。
この「決算変更届」は建設業法により義務付けられた重要な手続きであり、提出を怠ると罰則等のペナルティが科される可能性があります。今回は、決算変更届の重要性と具体的な提出方法について、行政書士の立場から解説致します。
決算変更届とは?
決算変更届とは建設業許可を受けた事業者が、毎事業年度終了後に提出しなければならない報告書類です。
事業年度終了届とも呼ばれており、前年度の工事実績や財務状況を行政庁に報告するためのものです。 なかにはこの決算変更届が税理士の決算報告書と同じものだと勘違いされている場合があります。 決算報告書は事業年度の財務状況や経営状況をまとめた書類のことをいい、決算変更届とは別のものですので注意しましょう。
提出期限先は?
決算変更届の提出期限は、毎事業年度終了後4ヶ月以内となっています。 例えば3月末決算の会社の場合は、7月末日が提出期限となり、一人親方のような個人事業主の方であれば、決算月は12月末となりますので、翌年4月末日が提出期限となります。
提出先は?
建設業許可が国土交通大臣免許の場合は、主たる営業所(本店)の所在地を管轄する地方整備局となります。 主たる営業所が東京都にある場合は、関東地方整備局となり、主たる営業所が大阪府にある場合は近畿地方整備局となります。
知事許可の場合は、営業所が所在する都道府県の建設業許可担当部署となります。 都道府県によっては土木事務所や広域振興局などの出先機関が窓口になっている場合もあります。
ちなみに神奈川県である当事務所では、神奈川県県土整備局建設業課が提出先となります。
必要書類
〈必要書類〉
1.変更届出書(決算用) 2.工事経歴書
3.直前3年の各事業年度における工事施工金額
4.財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変更計算書など)
5.納税証明書(法人税または所得税、消費税)
6.事業報告書(株式会社の場合)
作成時のポイント
工事経歴書では、前年度に施工した全ての工事を業種別に記載する必要があります。工事の記載漏れや金額の不整合について詳細な確認が行われます。特に下請工事と元請工事の区分を明確にする必要があります。
財務諸表については、税務申告書と数値が一致していることを確認する必要があります。特に売上原価の項目については、必須項目として厳しくチェックされますので、適切な数値の記載が必要です。
また、提出書類には各都道府県独自の様式や記載要領があるため、ご自身の管轄の都道府県のホームページから最新の情報の様式を入手して下さい。
万一、提出を怠ったら?
決算変更届の提出を怠ると、建設業法違反となり、罰則が科せられる可能性があります。 建設業法第50条には6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が定められています。これは行政処分ではなく刑事罰であり非常に重い罰則といえます。罰金刑を受けた場合、建設業許可の欠格要件に該当してしまい、現在の許可が取り消されるだけではなく、その後5年間は新たな許可を取得できなくなります。これは事業継続の危機に直面してしまいますので注意しましょう。
決算変更届の未提出によるデメリット
建設業許可の更新ができない:5年ごとの更新時に決算変更届の提出が前提条件になります。
業種追加できない:業務拡大のために新たな業種の追加をしたくても出来ません。
経営事項審査(経審)が受けられない:公共工事の入札に必要な経審の申請が出来ません。
金融機関の融資に影響あり:建設業法違反ということから金融機関からの信用が下がり、融資を受けづらくなります。
この様に、毎年提出の決算変更届においても、日々の業務に尽力されている皆様においては、作成・提出まで行うことは容易ではありません。当事務所では建設業許可申請はまちろん、決算変更届の作成、申請を承っています。適切なサポートにより、法令遵守と事業発展の両立を実現いたします。