宅建業を始めるにあたって、避けて通れないのが、事務所の要件といえます。一言に事務所の要件といっても単に机を置けば良いわけではありません。宅建業法では、継続的に業務を行うことができる拠点、つまり事務所の実体があることを厳格に求められています。
その証明として、免許申請時に提出するのが、事務所を使用する権原に関する書面です。
ただ、契約書を写すだけと思っていると、補正修正の指示が出て免許交付が遅れることに繋がる恐れがあります。
今回は、神奈川県の手引きを基に、失敗しない書き方を解説します。

事務所を使用する権原に関する書面とは?

この書類は、一言でいえば、宅建業の事務所として使用する正当な権利を持っていることの誓約です。この誓約は申請者が知事や大臣に対して行うものです。
法人の場合は、代表者が、個人の場合は本人が、内容に相違ないことを誓約して記入します。原則として、賃貸借契約書自体の原本提示やコピーの添付は不要ですが、必要に応じて関係書類の提出を求められる場合があります。また、これは神奈川県の場合ですので、自治体によって異なりますのでご注意ください。いずれにせよ、契約書の内容と整合性が取れていることが絶対条件です。

ケース別の具体的な書き方のポイント

手引きには4つの代表的なケースが紹介されています。ご自身の状況に当てはまるのを確認しましょう。

※神奈川県 宅地建物取引業法免許申請書等の記載手引 引用

①申請者本人がその物件の所有者である場合

「所有者」欄

申請者が法人の場合は「株式会社〇〇代表取締役〇〇〇〇」、個人の場合は本人の氏名を記入します。

②第三者から借りている場合(一般的な賃貸借)

・所有者:大家さん(貸主)の氏名。
・契約相手:「同左」(所有者と契約者が同じ場合)。
・契約期間:契約書通りの期間。ここで重要なのは自動更新の有無です。期間が過ぎているように見えても、自動更新条項があれば、その旨を付記します。
・契約形態:「賃貸借契約」と記入。
・用途:必ず「事務所」と記入してください。

賃貸借契約書の用途欄が「居住用」になっている場合、そのままでは宅建業の免許は下りません。その場合、別途大家さんから「事務所として使用することを承諾する」という承諾書をもらう必要があります。

③転貸借(サブリース)の場合

転貸借とは例えば「Aさん(大家さん)からBさんが借り、Bさんから申請者が借りる」という形です。

・所有者:Aさん(大家さん)。
・契約相手:Bさん(転貸人)。
・契約形態:「転貸借」と記入。

ポイントとしては、大家さんであるAが転貸を承諾している必要があります。

④法人申請で、代表者個人の所有物件を事務所にする場合

代表者個人が持っているビルの一部を、自身の会社に貸し出すようなケースです。

・所有者:代表者氏名。
・契約相手:「同左」。
・契約形態:「使用承諾」。
・期間:期間の定めがなければ「期間制限なし」と記入します。

間違えやすい3つのチェックポイント

実務でよくあるミスをまとめました。提出前のセルフチェックとして参考ください。

チェック1:「所有者」欄は法人の代表者名まで必要

所有者が法人の場合は、会社名だけではなく「代表取締役の氏名」までセットで記入する必要があります。

チェック2:契約期間と自動更新の記載

免許申請時に契約期間が満了しているように見える記載はNGです。必ず現在の有効期間を記入し、自動更新されているのであれば「自動更新」という文言を忘れずに添えてください。

チェック3:用途が「事務所」になっているか

用途は土地建物登記簿謄本や建物賃貸借契約書に記載された用途(事務所等)を記入します。もし契約書が「店舗」や「住宅」となっている場合は、実態として事務所として使用できることを証明する追加書類を準備しましょう。

事務所の独立性

神奈川県に限らず、多くの自治体では事務所の独立性を厳しくチェックします。

・他の会社とパーテーション1枚で仕切られているだけではないか?
・個人の生活スペースを通らずに事務所に行けるか?
・入口に看板(商号)を掲げられているか?

事務所を使用する権原に関する書面は、あくまで権利の証明ですが、実際の免許審査では、これに加えて、事務所の写真を提出します。書類上の権利と、写真に写る実体が一致していなければなりません。

まとめ

事務所を使用する権原に関する書面は、誰から、誰が、何の目的で、いつまで借りるのかを、公的な書類と一語一句合わせる必要があります。特に入居審査が終わったばかりで、まだ手元に契約書が無い状態で書き始めてしまうと、後に日付や名称が異なり、書き直しになるケースもあります。契約書の最終版を確認してから記入することが肝要です。
宅建業免許に関する申請で不安がある方は、当事務所へお気軽にご相談ください。
当事務所では、要件の事前確認から、書類作成、申請までトータルでサポートいたします。
グラス湘南行政書士事務所